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労働問題

未払い残業代の支払いを会社に求めるには|請求方法や証拠収集、消滅時効への注意など

時間外労働をした場合、会社は当該従業員に対して残業代を支払わなければなりません。
これは労働基準法で定められている義務です。
しかも時間外労働に関しては割増賃金の支払いが義務付けられており、十分な賃金を受け取れていない方はこれを請求する権利を持ちます。
未払い残業代があるときどう対応すればいいのか、請求する際のポイントなどをここで紹介していきます。

未払い残業代がある場合の対応

「残業代を支払ってくれない」「残業代として正しい金額が支払われていない」といった場合は未払い残業代の存在と金額について確認します。
その上で、いくつかある請求手段のうちいずれの方法を選択するのか、検討を進めていきましょう。

まずは未払い残業代の確認

まずは、ご自身に残業代を請求する正当な権利があるのかどうかを確認しておきます。
次のようなケースでは請求できる可能性が高いと考えられます。

  • 1日8時間・週40時間を超えて働いたが、残業代の支払いがない
  • 残業代も振り込まれているが、割増賃金(1.25倍)になっていない
  • 22時以降も働いたが、通常の割増賃金しか支払われておらず、深夜労働における割増賃金(1.5倍)になっていない
  • 店長の肩書ではあるが、経営管理を行っているとはいえず、従業員としての実態で残業をしている
  • どれだけ残業しても固定の残業代しか支払われていない

未払いの残業代が存在することだけを確認するのではなく、「いくら支払われていないのか」についても計算して調べておきましょう。
ただし正しい計算を行うには法律の知識が必要です。
どの程度割増されるのか、割増賃金が適用されるのは何時間か、など詳細に労働時間について調べていく必要があります。
金額に誤りが生じないよう、専門家に相談して対応してもらうことも重要です。

直接会社に支払いを求める

未払い残業代が明らかになれば、次に、会社に支払いを求めます。
支払いを求める方法はいくつかあります。
もっともシンプルなのは「直接会社に対して支払うよう求める」というやり方です。
もし、残業代の未払いが会社側の単なるミスであれば、直接支払いを求めることですぐに対応してもらえるでしょう。
一方で、意図して残業代を支払わない会社も存在します。
このような会社に対して直接従業員の方が請求するのはハードルが高く、素直に応じてくれない可能性も高いです。
直接請求が難しいと思われる場合は、次項以下の別の手段を検討しましょう。

労基署に相談する

労働基準監督署(労基署)に相談するというやり方もあります。
労基署は、適法な労働環境が作られているかどうかをチェックする役割を持っています。
そこで労基署に相談して状況を説明することをきっかけに、労基署が会社に対して是正勧告等をしてくれることがあります。
この勧告を受けて会社側が未払い残業代を支払ってくれるかもしれません。

ただ、労基署への相談では注意すべき点がいくつかあります。
1つは、労基署は労働者個人の救済を担う機関ではないということです。
代理人となって支払い請求をしてくれるわけではなく、会社に対して、労働基準法に従った適切な企業運営をしなさいと働きかけるのが主な役割です。

もう1つは、是正勧告に強制力がないということです。
会社は是正勧告に従わないことも可能ですし、その後違法であることが明らかになっても、自動的に未払い分が振り込まれるわけではありません。
会社側で自発的に支払ってくれない場合、結局従業員側で別途手続を進める必要があります。

弁護士に相談する

労働環境是正による間接的な問題解決ではなく、未払いの分を支払ってもらって直接問題を解決するためには、弁護士への相談が一番です。
弁護士に依頼すれば、直接交渉でも、労働審判(労働問題を迅速に解決するための法的手続)でも、訴訟でも、代理人として対応してくれます。
依頼費用がかかるのがデメリットですが、ご自身で対応するより素早く解決できる可能性が高くなります。

未払い残業代請求のポイント

未払いの残業代を請求するとき、「証拠を確保してから支払いを求めること」「請求権が時効で消滅する前に権利を行使すること」「未払い分に加えて遅延損害金等も請求すること」が重要なポイントとなります。
それぞれの詳細を説明していきます。

証拠を集める

残業代の未払いが真実であったとしても、そのことを客観的に示すことができなければ勝ち目はないでしょう。
会社側のミスであればそれでも対応してもらえるかもしれませんが、悪意を持って支払っていない会社だと、証拠がないのをいいことに「残業はなかった」あるいは「十分な賃金を支払った」などと主張してくる可能性があります。
そこで次に挙げる証拠を確保しておくようにしましょう。

契約書「雇用通知書」「雇用契約書」「労働契約書」など、所定の労働条件が記載された書面については、会社側に交付義務がある。この書面から残業代の計算方法等が確認できる。
就業規則就業規則には就業時間や時間外労働の有無、休日に関する規定が置かれている。残業代を計算するために必要な情報が載っていることがあるため、要チェック。
タイムカードや勤怠記録タイムカードなど、日々の勤怠管理をしているツールやシステムに記録されている情報は有力な証拠となり得る。ただしタイムカードの打刻後に働いているケースもあるため、これだけで十分とはいえない。
メールの履歴仕事で使っているメールのアカウントから、働いていた時間を推認でいることもある。そのため過去のメール送受信の履歴も保全しておく。
出退勤の履歴出勤時間、退勤時間などは、タクシーの利用時に受け取った領収書などから立証することもできる。他にも夜中の仕事をカフェでしていた場合など、仕事に関わる資料を受けとっているなら、大事の保管しておく。
残業中の仕事内容を説明できる資料時間外に働いていたとしても、会社側が「必要のない作業をしていた」「仕事に関係のないことをしていた」などと主張してくるおそれもある。そこで残業指示書、指示を受けた際のメールなど、残業中にしていた仕事内容が説明できるような資料も残しておく。

時効消滅する前に請求する

残業代の支払いを求める正当な権利があったとしても、消滅時効を迎えることで権利が消滅してしまいます。
そのため本来支払われるべきであった日から「3年以内」に対応するよう注意しましょう。
法律上、未払いの賃金については5年間の消滅時効期間が設けられているのですが、従来2年であったことも鑑みて、経過措置としてしばらくの間3年間の消滅時効期間として運用されているためです。
この期間を過ぎてしまうと、未払い残業代の存在が認められても、請求を退けられてしまいます。

遅延損害金と付加金も請求する

本来支払うべきであった日からの「遅延損害金」も発生していますので、その分の請求も行います。
退職前だと年3%、退職後だと年14.6もの遅延利息が付きます。
未払いの残業代が大きいほど遅延損害金として請求できる金額も大きくなりますので、弁護士に依頼するなどして請求してもらいましょう。
また、訴訟により請求する場合、裁判所の裁量で「付加金」の支払いが命じられることもあります。
未払い賃金相当、最大だとその2倍もの金額について、支払いが命じられます。