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労働問題

未払い給料を請求する流れと注意点! 労基署や裁判所、弁護士を頼りに回収を目指そう

労働への対価として給料を受け取ることは、労働者として当然の権利です。
しかし給料をきちんと支払ってくれない会社も存在します。
この場合会社に対して支払いを求めることになりますが、このときの従業員はどのように対処すべきでしょうか。
当記事で未払い給料請求の流れや注意点をまとめます。

未払い給料請求までの流れ

未払い給料があるとき、まずはその金額を正確に把握すること、未払いであることの証拠を集めることが重要です。
その上で直接会社に対して請求を行う、あるいは裁判所を利用して請求を行うことになります。
基本的な流れを以下に示します。

未払い給料を計算する

請求をするには「未払い金がいくらあるのか」を把握する必要があります。
金額が明らかにならなければ請求書への記載にも困ってしまいます。
そこで給与明細、雇用契約書、就業規則などを参考に、本来受け取るべき給料の金額を計算します。
毎月定期的に支払われる給料の他、ボーナスなどの一時金、休業手当や割増賃金、退職金も未払い賃金として計算に含めることができます。
ただし、ボーナスの支給や退職金に関してはどの企業でも当然に受け取ることができるものではありません。
労使間で支給条件が定められており、使用者である会社側に支払いの義務が存在していなければなりません。
一方、休業手当や割増賃金などは労働基準法に支払うべきケースが規定されており、法令上の要件を満たすときは会社に支払いの義務が生じます。

未払い給料があることの証拠を集める

未払い給料の存在を会社が認めているケースもあれば、これを認めてくれないケースもあります。
あるいは金額について対立することもあるでしょう。
このようなケースでは「証拠集め」が非常に重要です。
未払い給料が存在していること、請求金額が正しいことについて、客観的に判断できる資料を用意します。

次のような資料は証拠として有力です。
できるだけ多く備えておきましょう。

・労働条件が記されている労働契約書
・労働条件が記されている就業規則
・勤務時間が記録されたタイムカード
・残業したときの業務内容が記されている業務日報や残業指示書
・支払い済みの給料が記されている給与明細書

また、必ずしも有力な証拠として使えるとは限りませんが、次のような情報もできるだけ多く備えておくと良いです。

・勤務時間について記録された日記やメモ
・業務に使ったパソコンの作業記録
・残業時間に送信したメールの履歴
・深夜労働をした日に使ったタクシーの領収書

会社に直接支払いを求める

以上の準備が整えば請求を行いましょう。基本的には会社に対して直接支払いを求めることになります。

計算した未払いの給料等を請求書にまとめ、支払期限、支払先もこれに明記します。
請求書の渡し方はどのような方法でもかまいませんが、後々のトラブルをできるだけ防ぐためには手渡しや普通郵便によるのではなく、配達証明付きの内容証明郵便で送ることが大事です。

裁判所の手続を利用して支払いを求める

直接の請求に応じてくれない場合、裁判所の利用を検討します。
一般的な民事訴訟を利用することもできますが、簡易迅速な手続もいくつか用意されていますので、よほど強い対立関係に立っていない限りまずは以下の手段を検討すると良いでしょう。

手続特徴申立先
支払督促裁判所書記官が会社に対して支払いを命じる書面審査のみ会社側が異議申立てをすると通常の民事訴訟に移行する簡易裁判所
少額訴訟60万円以下の請求に限り利用可能原則として審理と判決が1回の期日で行われる費用は通常の民事訴訟と変わらない
民事調停裁判官と調停委員が解決を図る話し合いは非公開で行われる未払い給料以外の、解雇の問題も併せて話し合うことができるなど柔軟性が高い
労働審判裁判官と労働審判員が解決を図る原則として審理と判決は3回以内の期日で行われる未払い給料以外の、解雇の問題も併せて話し合うことができるなど柔軟性が高い地方裁判所

未払い給料請求の注意点

未払い給料の請求に関して、次の点に注意しましょう。

・支払いを求める権利には時効がある
・内容証明を付して請求する
・労働基準監督署にかけこんでも代理での請求はしてくれない
・労働問題に強い弁護士を早めに頼る

各注意点の詳細を説明していきます。

請求権は3年間で時効消滅する

法律上、ある権利が認められる場合でもその権利が永続するとは限りません。
権利の行使をいつまでも放置している権利者の側にも問題があると考えられており、一定の期間を経過すると消滅時効が成立。
相手方はその権利の消滅を主張することが可能になってしまいます。

そして給料の消滅時効に関しては、労働基準法に規定が置かれています。

(時効)

第百十五条 この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。

第百四十三条・・・

③ 第百十五条の規定の適用については、当分の間、同条中「賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間」とあるのは、「退職手当の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)の請求権はこれを行使することができる時から三年間」とする。

引用:e-Gov法令検索 労働基準法 第115条・第143条第3項

つまり、未払い給料の時効は原則として「5年」であるところ、経過措置により定期賃金や残業代などについては「3年」、退職金については「5年」であると定められています。
できるだけ早めに対応するよう心がけましょう。

なお、給料が未払いのまま会社が倒産してしまっても「未払賃金立替払制度」により救済されるケースがあります。
年齢制限や支給額の上限、ボーナスが立替払い対象外になるなどの決まりはありますが、利用を検討する価値はあるでしょう。

内容証明を付して請求する

会社に対して請求を行うときは、請求したことの記録が確実に残るようにしましょう。
請求書の手渡しや口頭での請求は避け、内容証明を付して請求書を送付することが大事です。

内容証明が付されることで、相手方がいつ請求書を受け取ったのかについての証明が容易になります。
また、請求書を直接渡すような場合に比べて、未払い給料請求に対する強い意志を示すことができます。

「このままだと裁判沙汰になるかもしれない」と会社側に心理的な圧迫を与えることができるでしょう。
ただし内容証明の付すにあたっては、守らなければならない細かなルールがあります。
文字数、行数、訂正方法など、郵便局のホームページを参照して適切に提出するようにしましょう。

労働基準監督署は代理請求してくれない

給料を支払わない、違法な労働条件を従業員に課している、などの事情がある場合は労働基準監督署に相談することも可能です。
労働問題は単に会社と従業員の個人的な問題にとどまらないことが多く、労働基準法違反などの法令違反を会社が犯していることもあります。
そこで、こうした問題を是正するために労働基準監督署は会社に対して指導や是正勧告を行ってくれます。
ただ、このときの労働基準監督署の主目的は会社の違法な状態を改善することにあり、従業員個人の救済を図ることではありません。
一従業員の抱える未払い給料の問題を肩代わりし、代理で請求したり訴訟に対応したりといったことまではサポートしてくれません。

労働問題に強い弁護士を頼る

上述の通り、労働基準監督署に対しては会社とのトラブルを相談することができるものの、手厚いサポートまで期待することはできません。
個人的な問題についてサポートしてもらうには、弁護士を頼る必要があります。
弁護士に事情を話し、請求や請求をするための準備についても依頼を出すと良いでしょう。
どのような証拠を集めるべきか、今後どのように対応すべきか、状況を整理して弁護士が的確なアドバイスをしてくれます。